コンパクトシティのモデル都市・富山市は失敗?メリットやデメリットは?
富山市は路面電車など公共交通機関を中心に据えたコンパクトなまちづくりを目指している都市です。(1)公共交通機関の活性化、(2)公共交通機関沿線への居住促進、(3)中心市街地の活性化をコンパクトシティ政策の柱に位置付けています。
こんにちは。全国通訳案内士のYUICHIです。今回の記事では、2002年以降本格的に始動した富山市のコンパクトシティ政策についてお話します。
今回の記事は、観光情報を探している人ではなく、移住情報を探している人向けに書いています。
コンパクトシティ政策には、人口が減少していく今後の日本社会が持続可能な都市を形成するために効果が期待されています。
富山市は、日本の人口減少を憂い、いち早くコンパクトシティ政策への舵を切った都市です。
富山市がコンパクトシティ整備計画に基づいて政策を行ったことにより、具体的には何が変わってどのような効果を生み出したのでしょうか。
なぜ富山市はコンパクトシティを目指したのか?
日本経済が力強く成長した1950~1970年代、一般家庭への自家用車の普及が一気に進み、公共交通網が縮小していきました。それにともなって市街地が拡張し、郊外に多くの店やショッピングモールが建設されました。
その結果、中心市街地に人が集まらなくなっただけでなく、住民の車依存度はますます高くなっていったのです。
人口が郊外へ拡散していくと、富山市は住民サービスや市街地整備を行うために多額のコストがかかります。
水道管や電線を遠くまで伸ばさなければならなかったり、何かの仕事で職員が遠方へ向かう際にはガソリンだったり電車の運賃がかかったりします。
富山市にしてみれば、行政コストはかさむし、少子高齢化で税収は目減りしていく一方。これでは市の財政が立ち行かなくなるのでは…と心配になりますよね。
そのため富山市は路面電車など公共の交通網を充実させて、その周辺地域に居住することを推奨し、中心市街地の再開発を行うことで街の魅力を高めることを考えました。
これが富山市のコンパクトシティ構想なのです。
コンパクトシティ富山市はいつから、どんな取り組みを行なってきたの?
JR富山港線のLRT(ライトレール)化
富山市のコンパクトシティ政策は2002年に着工したJR富山港線(富山駅北-岩瀬浜)のLRT化に象徴されます。
LRTとはLight Rail Transit(ライトレール交通網)の略です。低床式の車両で市内軌道を走る路面電車による交通網です。
LRT交通システムには以下のような特徴とメリットがあります。
- 低床式の出入り口と電停のあいだの段差がなく、高齢者、障がい者、子供でも乗り降りしやすい。
- 鉄道に比べて車体が小型かつ軽量。そして電動で走る。輸送量は少ないが、ランニングコストが少ない。
- 路線バスと違い、一般道路の渋滞に影響されにくいため定時性が高い。目的地までスムーズに移動できる。
LRTは、人、環境、社会にやさしい優れた交通システムであることがわかりますね。富山港線のライトレール化により、富山市に住む高齢者の歩く歩数が、全国平均より1000歩も上回ったという話もあるくらいです。
市内電車のLRT化とまちなかの賑わい創出
2000年代初頭まで、富山市には「西武百貨店」と「大和百貨店」のふたつのデパートがあったのですが、市郊外に大型ショッピングモールが進出したことにより、相対的に中心市街地の魅力が低下しました。
そこで富山市は次々にまちなかを活性化するため、以下の施策を打ち出しました。
2007年 | 「大和百貨店」と専門店街を統合した「総曲輪フェリオ」と市民の賑わい広場である「グランドプラザ」を開業 |
2009年 | 明治時代から続く電停「丸の内」と「西町」が新しい軌道線軌道線で繋がり環状線となる。セントラムという近未来的なデザインの車両がデビュー |
2015年 | 北陸新幹線開業。東京駅と富山駅が2時間10分で往来できるようになる |
2020年 | 富山港線(富山ライトレール)と環状線が富山駅経由で統合される。これによって岩瀬地区と富山市まちなかエリアの回遊性が高まる |
路面電車沿線の便利な店舗・施設
今回の記事では、観光スポットではなく、市民目線で路面電車沿線にあるお店や施設を紹介します。
■ 富山駅
北陸新幹線や富山地方鉄道など富山県の公共交通のハブ機能を持つ大きな駅です。東京や金沢のほか、立山黒部アルペンルート、黒部峡谷、歴史都市である高岡など県内の主要都市や観光地を結ぶ駅です。
■ 国際会議場前
名前の通りですが、国際会議場では、国内外の大きなフォーラムやシンポジウムが開催されたり、確定申告の会場が設けられたりします。
■ 大手モール
電停周辺でトランジットモールが開催されたり、市民プラザで演劇などが催されたりしており、屋内外で色々なイベントが開催される地区です。
■ 桜橋
少し分かりにくいですが、電停を降りて松川を西3分ほど歩いたところに富山市役所があります。
■ 西町
富山市の中心市街地へ出かけたいなら、この電停が便利。他にも富山市立図書館や歯科クリニックなど日常生活に便利な施設も数多くあります。
■ グランドプラザ前
総曲輪フェリオ(富山大和)やグランドプラザなど市街地活性化の中核を担う商業施設やイベント会場があります。休日はグランドプラザまで足を運んで街歩きしてみましょう。
■ 西中野
この電停から富山市科学博物館まで徒歩5分。科学博物館では、科学や宇宙の不思議を体験できるイベントや展示品を観られるので、土日や夏休みは家族連れで賑わいます。
■ 堀川小泉
富山高校、富山いずみ高校、育英センターなど教育機関が多く点在するのがこの地区。路面電車沿線上に住んでいれば通学に大変便利です。
■ 安野屋
富山まちなか病院への診察や富山中部高校への通学に便利な駅。また、毎年8月1日に開催される北日本新聞主催の納涼花火大会の会場の最寄り駅でもあります。
■ トヨタモビリティ富山Gスクエア五福前
アリスショッピングセンターまで徒歩1分。スーパーや100円ショップなど生活に便利な店が色々入っているので、日常生活で必要なものはアリスで調達できます。
■ 富山大学前
言うまでもなく、富山大学へ行くための電停。学生街の雰囲気があり、学生に人気の飲食店なども点在しています。
■ カナルパークホテル前/インテック本社前
いずれも富岩運河環水公園も最寄りの電停。富山港線沿線に住んでいれば、電車で気軽に環水公園で散歩できます。
■ 粟島
大阪屋ショップというスーパーに隣接している電停。とやま健診プラザまでも歩いて5分。車を持たない人にはとてもありがたい電停です。
■ 越中中島
中島閘門や「サウナタロ」というスーパー銭湯の最寄り駅。駅前は、雑貨屋や飲食店などが軒を連ねており、小さな商店街を形成されています。どちらかといえば観光客向けの駅でしょうか。
■ 蓮町
馬場記念公園という公園や富岩運河沿いの遊歩道があります。散歩したいときに立ち寄ってみてもいいかもしれません。また「スコップ・トヤマ」という職住一体型のシェアハウスがあり、今後の発展が期待されます。
■ 富山競輪場前
言うまでもなく、地元のお父さん方ご用達の施設の最寄り駅です。レース開催日には大変混雑が予想される駅です。
コンパクトシティ富山市 まとめ
今回は、少子高齢化時代を見据えた富山市の取り組みであるコンパクトシティー政策についてお話ししました。いかがでしたか?
富山市といえば、路面電車で観光できる街として有名ですね。実は路面電車って富山市が都市として持続可能な形を維持するための重要な事業なのです。
路面電車による交通網は、北は岩瀬地区、南は南富山地区、西は五福地区まで伸びています。路面電車の沿線上に住んでいれば、富山駅や中心市街地まで15分から30分でたどり着くことができ、非常に便利です。
最近では、富山に1週間ぐらい安く滞在できるウィークリーホテルやゲストハウス、シェアハウスなどが増えてきています。
皆さんもぜひ、いちど路面電車沿線沿いに宿泊してみてください。きっと快適な市民ライフを疑似的に体験できると思います。
それでは、最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。