英語に訳しにくい日本語のフレーズ4選|日本語独特の言い回しに注意!
こんにちは。全国通訳案内士のYUICHIです。
日本語の「いらっしゃいませ」は接客の現場でお客様を迎え入れる大事なあいさつですね。では、外国人のお客さんが来たら何といえばいいのでしょうか?
僕たち日本人は、職場で顔を合わせた人たちに「お疲れ様です」、「よろしくお願いします」のように声をかけています。
また「いらっしゃいませ」は飲食店やスーパー、ホテルなどにおいてお客様を迎え入れるために欠かせないフレーズです。
そんな風に、僕たち日本人は日頃当たり前のように使っているフレーズがありますが、英語に置き換えるとなると少し悩んでしまいますよね?
今回の記事では、ちょっと英語に訳しにくい日本語の日常的なフレーズを集めてみました。記事を最後まで読んでいただければ、外国人を前にしても適切な形で声をかけることができるようになります。
「いらっしゃいませ」って英語で何と言えば?
僕たち日本人は「いらっしゃいませ」とお客様に声をかけて迎え入れますが、相手が外国人のお客様の場合、何と言ってお声がけすればいいのだろうか…と悩んでしまう人は多いと思います。
結論を言うと、 “Hello!” でいいです。
日本の英語教育で「いらっしゃいませ」は”May I help you?” や “Welcome!”などに置き換えられることが多いですよね。
しかし、”May I help you?” や “Welcome!”は、場合によっては外国人のお客様に不快感を与えてしまう可能性があります。
最初に知っておいていただきたいのが、
英語には「いらっしゃいませ」に相当する接客の決まり文句がない
ということです。
そんなのって…お客様をおもてなししたい日本人としてはちょっと寂しい気がしますよね。
敢えて「いらっしゃいませ」に相当する英語表現を充ててみるとしたら以下のようになります。
Welcome.
日本人なら、せっかく遠いところから自分のところへ足を運んでくれたお客様に気持ちよく「ようこそ」と言いたいもの。
しかし、このフレーズですら、飲食店以外ではそれほど使われることはありません。
飲食店であれば、そこで何かを食べて代金を支払う流れがほぼ決まっていますが、その他のお店についてはどうでしょうか。
たとえば、まだ何も買うものが決まっていないけれど、コンビニやヤマダでんきのような家電量販店へフラッと入っていったとします。
そこで店員さんに、“Welcome” って言われたらちょっと身構えてしまいませんか?
何か買わなきゃいけないのかな…ってなりますよね。
なので、”Welcome” は、予約されたエステサロンや美容院、ディズニーランドのアトラクションなど接客サービスを受けるのが前提になっている場合のみ使うようにしましょう。
「いらっしゃいませ」→ “May I help you?” の置き換えは要注意!!
学校の英語教育では「いらっしゃいませ」= “May I help you?” って習うことが多いのではないでしょうか。
実はこれって、けっこう危険な訳語なのです。
そもそも、”May I help you?” は文字通り「何かお手伝いしましょうか」、「私にできることはありますか」という意味です。
お客様に何か分からないことがあるので、お手伝いを申し出るということですね。
先述しましたが、飲食店の場合、お客様は店内のテーブルについて食事をすることが決まっています。
少なくともお客様がテーブル席に着くまでは、何も助けてもらう必要はないはずです。なので、”May I help you?” と声をかけられると少し差し出がましく感じられるかもしれません。
もうひとつ「いらっしゃいませ」の対訳としてマズい例をご紹介。
コンビニの店員さんが、「いらっしゃいませ」の日本語訳は「 “May I help you?” なんだよな」と覚えていたとしますね。
雑誌コーナーで商品を陳列する仕事をしていたとします。
そこに外国人のお客さんが店内に入ってきました。
店員さんは新しく覚えた英語のあいさつを使いたくって、その時に早速 “May I help you?” と行ってみました。
さあ、このとき外国人のお客様はどのように思うでしょうか?
先述のように、このフレーズの直訳は「何かお手伝いすることはある?」です。
コンビニの雑誌コーナーから入口までは少し距離があります。
このような場合、店員さんはお客さんに聞こえるように大きな声で “May I help you?”(いらっしゃいませ)と言わなければいけませんよね。
外国人のお客さんが入店するなりそんな声を聞くと「何か用?」くらいに聞こえてしまうでしょう。
BOOK OFF に入ると、店員さんが、一斉に「いらっしゃいませ、こんにちわ~」を連呼しているのを聞いたことがないでしょうか。
これを皆で一斉に “May I help you?” と言ってたとしたら…?
「何か用?」の大合唱!!!
想像するだけでも怖くなりませんか?(笑)
日本語で「いらっしゃいませ!」って大きな声で言っても、元気のいいお店だな~って好意的に受け止められるんですけどね(特にお寿司屋さん)。
これが文化の違いです。
せっかく辞書や翻訳機で調べた単語をストレートに使うと、相手の印象を悪くしてしまうことがあります。
まぁ、笑い話で済めばいいんですけどね。
接客英語、くれぐれも気をつけて使いましょう。
お客様をお迎えするときはシンプルに笑顔で普通のあいさつを
以上のことを踏まえると、「いらっしゃいませ」の訳語として “Welcome” や “May I help you?” を使うのは不自然ですよね。
結局のところ、店員がお客様に最初にかけるべき言葉としては、“Hello” が一番良いです。
どうしても「いらっしゃいませ」に近い歓迎の気持ちを伝えたいときは
飲食店ならお客様が席についたタイミングで
“Welcome. Thank you for coming!”(ようこそ。ご来店ありがとうございます)
ホテルならお客様がチェックインをするタイミングで
“We’ve been expecting you.”(おまちしておりました)
のように、添える感じで伝えるのが良いでしょう。
「お疲れさまです」や「よろしくお願いします」は英語で何と言えば?
僕たちは、職場で人に何かを依頼したり、ねぎらったりすることが多いですよね。
それ自体は、日本語が持っている素晴らしい特徴のひとつと言えるのですが、残念ながら外国語に訳すとなると難しいところです。
「お疲れ様です」は、”Hello” + ねぎらいの気持ち
主に職場で使うフレーズですね。仕事が終わった時に同僚に言ったり、社内の廊下で他の職員とすれ違った時に言ったりしますね。
100%文字通りに英語に直訳すると以下のような感じになります。
“You look tired.”
あいさつとしてはかなり変な感じがしますね…(苦笑)
そしてこちらは意訳。
“I appreciate your work.”
「あなたの仕事に感謝します」ってことですね。日本語が持っているニュアンスに近くなりました。
とはいえ、英語圏の人たちは、そのようなことを社内の廊下ですれ違いざまに言っているわけではありません。
結局、「お疲れさま」を英語に訳すと
“Hello.”
となります。
日本人としては少し寂しい気持ちにもなりますが、外国人の同僚がおられるなら、今のような説明をしてあげて、“Otsukaresama” と呼びかけてあげるといいですね。
「よろしくお願いします」は、微妙な距離感をもった親しみを表す言葉
このフレーズは、人に何かをお願いするとき、初対面の人に対して自己紹介をした後などによく使いますよね。
字面だけを捉えて直訳すると
“I’m asking you to do me good”
なんだか厚かましいイメージになります(笑)。
日本語で伝えたい意味からは程遠い印象ですね。
人に何かをお願いする前に感謝の意を伝えたいなら以下のような表現が良いかもしれません。
“Thank you in advance”
日本語に直訳すると「前もってあなたに感謝します」となります。
だいぶん意味は近づきましたが、それでも、「よろしくお願いします」と同じようなタイミングで使えるフレーズではなさそうです。
「よろしくお願いします」は初対面の時に使うフレーズと言いましたが、この場合の「お願い」には「懇ろに」とか「親しくなりましょう」という意味も込められています。
なので、英語でよく似たフレーズとしては
“Let’s keep in touch”
でしょうか。しかし、それも初対面の人に会うたびに使うのはかなり違和感があります。下手をすれば、ちょっとキモがられるかもしれないので注意が必要です(笑)。
なので、外国人の友達や同僚に対しては、これも日本独特の対人作法として“Yoroshiku Onegaishimasu” と、そのまま使うのが良いと思います。
「いただきます」には自然や神様への感謝の気持ちが込められている
それでは最後に番外編。「いただきます」は英語で何と言えばいいでしょうか?
「いただきます」の語源は「頂く」という動詞から派生しています。
「頂」は神様や自然、位の高い人、目上の人など自分より上位の存在や場所を表す概念であり、昔の日本人はそのような上位の存在(頂)から何かを授かった時に「頂く」という動詞を使っていたようですね。
日本人であれば、食事の前に手を合わせて「いただきます」と言うのが当たり前の習慣ですよね。
実は、「いただきます」は人間の生きる糧となってくれた動植物や魚からの恵みに感謝するだけでなく、食材を育てた人や収穫した人、調理してくれた人、配膳してくれた人などへの感謝の気持ちを表現しています。
これを英語に直訳すると
“I’m going to have it.”
これでは、単に「これから食べる」という自分の意思を伝えているだけにしか聞こえませんね。
英語風に感謝の気持ちを込めて表現するとこんな感じでしょうか。
“Thank God, I’m going to have it”
これなら食事をする人の感謝の気持ちが伝わりそうですね。しかし、英語圏ではこのようなフレーズを日常的に言っているわけではありません。
敢えて日本人の「いただきます」のように使うなら
“Amen”
が一番近そうですね!
※ “Amen” とは、ヘブライ語語源で「そうなりますように」という祈りを込めた言葉です。キリスト教では感謝の祈りを伝える時に唱えます。
まとめ
今回の記事は以上です。
古くから日本人は、独特の宗教観や美学、文化、風習を持っており、それらがあいさつや言葉遣いに現れています。
「お疲れ様です」や「いらっしゃいませ」など、日本語のあいさつには、あいさつ以上のものが込められています。
だから、いざ英語であいさつしようと思っても、”Hello” だけでは何か物足りない感じがしますよね。
一方で、英語は日本とは全くことなる文化の土台の上で形成されました。
そのため、元々英語にない概念を一生懸命英訳しようとしても、むずかしくて当然なのです。日本語の決まり文句に英語の訳語を当てはめようとしても、しっくりこないことは多々あります。
そこは文化の違いと割り切ること。それが自然な英語を話すためのコツです。
大事なことは、日本語と英語の間にある違いをしっかり理解して、それを外国人に説明してあげることではないかと思います。
それでは、最後まで記事を読んでいただいてありがとうございました!